文学賞(スペイン)

2010/02/26

ブレーベ叢書賞2010

 2月の文学賞スケジュールも着々と進んでいます(更新遅くなりました)。まずはこちら。

 2月8日発表、ビブリオテカ・ブレーベです。
 

premio Biblioteca Breve 2010

Guillermo Saccomanno : El oficinista

 アルゼンチンの作家、ギジェルモ・サッコマンノの受賞です。1948年ブエノスアイレス生まれ。アルゼンチンでは国民文学賞ほか国内の文学賞をいくつか獲っていて、ある程度知名度のある作家なんですが、今回のビブリオテカ・ブレーベ受賞がほとんどスペイン文学界デビューと言っても良いかもしれません。小説のほかにコミックのシナリオライターとしても知られています。最近はブエノスアイレス近郊の海辺の保養地で暮らしているらしく、今回の授賞式も健康上の理由で欠席でした。

 それから、これはもうひとつのブログ向けの情報かもしれないんですが、2009年セマナ・ネグラでダシール・ハメット賞を受賞しています。(←って、もうスペインでお披露目済んでるじゃないか<心の声)タイトルは”77”。ラファエル・ビデラの独裁時代が舞台で、三部作の3作目に当たります。

 さて、受賞作ですが。キャッチフレーズに「カフカ + ブレードランナー」って書いてあるんですが……! SFですか?(わくわく。)
 でもあらすじ紹介を見ると、職を失わないためにどんな屈辱にも耐えてみせます、というどぶねずみ色のリーマンが恋をして人格変えようとする話? んん? ただ、背景となっている街が、息が詰まりそうな警察による統制下にあり、SF小説で描写されているような雰囲気がある、ということらしいのですが。上述の"77"について調べたときも思ったんですが、やはりこれはかなりアルゼンチンの独裁制時代の闇の部分を反映しているような気がします。
 2003年夏、一ヶ月で書き上げ、それから6年間も(!)手を入れてやっと応募したという作品。審査員満場一致で、というのもあまり例がなく、期待が高まります。


◆ リンク: El premio Biblioteca Breve distingue a Saccomanno, autor argentino de culto(El País).

◇ 2009年ブレーベ叢書賞
◇ 2008年ブレーベ叢書賞
◇ 2007年ブレーベ叢書賞
◇ 2006年ブレーベ叢書賞
◇ 2005年ブレーべ叢書賞

◎ ブレーベ叢書賞受賞作品

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2010/01/17

ラサリーリョ賞2009

 時間があるときに少しでも遡って、抜けたデータを埋めておこうと思っているんですが、ごっそり抜けてますね(^^; sweat02

 12月に発表されるラサリーリョ賞、2005、2006年分を取りあげただけになっていました。
 Organización Española para el Libro Infantil y Juvenil (OEPLI)(スペイン児童・ジュブナイル文学協会)主催の、スペインの児童文学賞では最も歴史の長い賞です。

 ☆絵本部門(Álbum Ilustrado) Jorge del Corral(イラスト) y Alberto Pérez Villacampa(文), 'Los fabricantes de las montañas'.

 ☆文芸部門 Marcos S. Calveiro 'O pintor do sombreiro de malvas'

 マルコス・S・カルベイロは作品題名でもわかるとおりガリシアの作家。1968年生まれで、2008年には批評家協会賞ガリシア語小説部門も受賞しています。もともと児童文学からスタートした作家で、批評家協会賞受賞作Festina lenteが初めての一般向け小説でした。2008年のバルコ・デ・バポール賞も受賞。
 受賞作は、晩年のゴッホをモデルにしているようです。

 2007年、2008年については下にOEPLIのデータへのリンクだけ貼っておきます。(時間があったら後で書き足します)

◆ PREMIOS LAZARILLO 2009
◆ PREMIOS LAZARILLO 2008
◆ PREMIOS LAZARILLO 2007

2006年のラサリーリョ賞
2005年のラサリーリョ賞

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2010/01/10

ジョゼップ・プラ賞2010

 ナダル賞と同時発表のカタルーニャ語小説の賞。実は昨年の同賞データ、ほとんど記事を書いておきながら「下書き」状態で放りこんであったので、この記事のアップと同時に2009年の項目も「公開」ステータスにしておきます。下のリンクからどうぞ。

42 Premi Josep Pla de prosa en lengua catalana
Llucia Ramis: Egosurfin

 リュシア・ラミス、1977年パルマ・デ・マリョルカ生まれ。新聞記者です。小説はこの作品が2作目です。
 作品の概要がどうもぴんと来ない……30代「イケア世代」の姿を描く、という言葉がどこを見ても目につくんですが、自己啓発本の著者である30代の女性が主人公とか。「イケア世代」ってスペインでも普通に使ってるんでしょうか? ちなみにタイトルの"egosurfin(g)" とは、いわゆる「エゴサーチ」、インターネットの検索サイトで自分の名前やハンドルなどを検索してみること。

◇ 2009年ジョゼップ・プラ賞
◇ 2007年ジョゼップ・プラ賞
◇ 2006年ジョゼップ・プラ賞
◇ 2005年ジョゼップ・プラ賞

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ジョゼップ・プラ賞2009

 こちらは2009年のデータになります(2009年1月7日に下書きを書いたまま放置していた記事。一年後のアップです)。

 毎年ナダル賞と同時に発表される、カタルーニャ語小説の賞です。

XVI Premi Josep Pla de prosa en lengua catalana
Gaspar Hernández: El silenci

 ガスパール・エルナンデス、この人も新聞記者・作家という肩書き。1971年ジローナ(のSant Esteve d´en Bas)生まれです。periodista といってもカタルーニャ・ラジオなどに関わっているから「ジャーナリスト」といった方がいいでしょうか?

 今年の注目ポイントはこの受賞作のテーマ。「瞑想をとおして癌を克服しようとする日本人女性の話」ってどういうハナシなんだー。(何故日本人?)

 ちなみに、2008年は Melcior Comes (Les Illes, 1980) porLa batalla de Walter Stamm でした。

◇ 2007年ジョゼップ・プラ賞
◇ 2006年ジョゼップ・プラ賞
◇ 2005年ジョゼップ・プラ賞

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2010/01/08

ナダル賞2010

 66回目、メデタク(?)ぞろ目を迎えたナダル賞……ですが、今年のナダル賞戦線異状アリ! まずは結果を。

第66回ナダル賞 /66ª edición del Premio Nadal
Clara Sánchez : 'Lo que esconde tu nombre'

 ご覧の通り、賞史上初めて次点該当作がない! おそらく資金難が原因では、などと言われているようですが、出版不況に例外はないというところ。

 クラーラ・サンチェスは1955年グアダラハラ生まれ。大学・高校で教鞭をとっていたこともあり、現在は作家業のかたわら新聞・雑誌にコラムを書いたりもしています。2000年にはÚltimas noticias del paraísoでアルファグアラ賞を受賞しています(ちょうど十年前ですね)。

 受賞作はサイコスリラー。マウトハウゼン強制収容所の生き残りで、ナチスの残党を追うことに執念を燃やす老人、そのターゲットらしきアリカンテの海辺に住むドイツ人老夫婦。そこへ妊娠中の若い女性がからんでくるらしいのですが。この、アリカンテに住む老夫婦は逃亡戦犯の一人であるアリベルト・ハイムがモデルでは、とか。

 今年のナダル賞応募作の特徴として、ミステリ/ノワール系の作品がかなり多かったらしい、と昨年末から聞いていたのですが、受賞作もそのひとつと言えるでしょうか。ここ数年の各賞受賞作を見ても、その流れは止まりそうにないような気がします。注目していきたいと思います。

◆リンク: Un 'thriller' psicológico gana el Nadal.(EL PAÍS)

ナダル賞2009
ナダル賞2008
ナダル賞2007
ナダル賞2006
ナダル賞2005
ナダル賞2004

ナダル賞受賞作品

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2009/10/16

プラネータ賞2009

 10月15日、今年のプラネータ賞が発表されました。

Premio Planeta de novela 2009
Ángeles Caso : Contra el viento.
 finalista - Emilio Calderón: La bailarina y el inglés
0039562


 アンヘレス・カーソは1959年ヒホン生まれ。TVEのニュースをはじめ、TVや新聞・雑誌でジャーナリストとして、また文化機関で働いた経験もあり。35歳の時に小説家に転身。実は1994年(15年前!)のプラネータ賞次席を El peso de las sombras で獲得しています(カミーロ・ホセ・セーラが受賞した年)。2000年にはフェルナンド・ララ賞を Un largo silencio で受賞。

 受賞作はカーボベルデからヨーロッパへ移住しようと、ポルトガル経由でスペインに来たものの、なかなかうまくいかず苦労する若い女性が主人公。「21世紀のヒロインたちに敬意を表して」と作者は語っていますが、スペインで現在も深刻な移民問題を扱った作品ということで注目を集めそうです。モデルは、自身が娘を育てる時にベビーシッターとして助けてくれたカーボベルデ出身の女性だとか。

 次席のエミリオ・カルデロンは1960年マラガ生まれ。1944年のインドが舞台の「陰謀と冒険」の物語、というところまではプラネータ社らしい……と思っていたら。日本軍がビルマ経由でインドに侵攻しようとしたとき、大英帝国の名残を救おうとするひとりのイギリス人の話、って。うーん……。
 ちなみに、この人も昨年のフェルナンド・ララ賞を El judío de Shanghai で受賞しています。奇しくも二人ともフェルナンド・ララ賞からプラネータ賞、というコンビに。
 
  * * * * *

 ところで、この授賞式でカーソが受賞挨拶をしている最中に、選考委員のペーレ・ジンフェレールが意識を失って倒れ、病院へ搬送されました。そういうわけで、一時騒然とした授賞式は早々に切り上げられ、記者会見には受賞者ではなくジンフェレールを診察した医師が最初に登場。本人その日の午後から違和感を感じていたものの、診察では特に重大な兆候は発見されず、念のため検査入院したそうです。読んでいたこちらもびっくりいたしました。

◆ Ángeles Caso logra el Planeta con un libro sobre emigración  (El País)

◇ 2008年プラネータ賞
◇ 2007年プラネータ賞
◇ 2006年プラネータ賞
◇ 2005年プラネータ賞

◎ プラネータ賞受賞作品

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2009/08/21

フェルナンド・ララ賞2009

 ここ数年紹介していなかった賞なのですが、ちょうど発表の時に新聞を見てメモしていたので。5月15日でした。
9788408087250

Premio Fernando Lara de Novela
 Susana Fortes: Esperando a Robert Capa

 スサーナ・フォルテスは1959年ポンテベドラ生まれ。バレンシアで歴史の教師として働きながら雑誌などに書評・映画評などを書き、作家活動も続けています。2001年、Fronteras de arena でプリマベーラ賞次席、2003年El amante albanésでプラネータ賞次席。これまでの長篇はミステリ寄りの作品が多かったようで、映画ファンらしい側面も覗く作風だそうです。
 受賞作はタイトルがそのものずばりというか……。賞発表の時の紹介だけではわからなかったんですが、要するに共にユダヤ系の(ハンガリー人・ドイツ人)写真家男女がパリで出会い、パートナーとしてスペイン内戦を取材する話……そう、ロバート・キャパとゲルダ・タローの話なんですね。世界の戦場で命を賭して報道に関わるすべてのジャーナリスト・カメラマンへのオマージュ。

◆ Susana Fortes gana el Premio Fernando Lara de Novela (El País)

◇ 2004年フェルナンド・ララ賞

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2009/08/06

Premios de la Crítica 2008

 Los Premios de la Crítica(批評家協会賞)は四つの公用語(カスティーリャ語、カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語)に対してそれぞれ小説・詩部門の受賞作が選ばれ、合計8部門。前年に出版された作品が対象です。4月18日発表でした。

CRITICA ESPAÑOLA
Novela: David Trueba (España, 1969) por Saber perder
Poesía: Eduardo García (España, 1965) por La vida nueva
Novela (c): Joan Francesc Mira (Valencia, 1939) por El professor d'historia
Poesía (c): Teresa Pascual (Valencia, 1952) por Rebel·lió de la sal
Novela (e): Kirmen Uribe (Euskadi, 1970) por Bilbao-New York-Bilbao
Poesía (e): Xabier Lete (Euskadi, 1944) por Egusentiko esku izoztuzh
Novela (g): Marcos S. Calveiro (Galicia, 1968) por Festina lente
Poesía (g): Chus Pato (Galicia, 1955) por Hordas de escritura

 ダビッド・トゥルエバってあのダビッド・トゥルエバだよね? と確認してしまいました。一部には脚本家・映画監督としてのほうがおなじみではないでしょうか。"Soldados de Salamina"(2002)や"Bienvenido a casa"(2006)などの脚本/監督で、ゴヤ賞の脚本賞候補にもたびたび名前が挙がっています。他の監督の作品に俳優として出演したりもしていて、「映画人」だと思っていたのですが、小説はこれが3冊目。受賞作はサッカー関係の話らしく、カミーロ・ホセ・セーラの『蜂の巣』が引き合いに出されているところからすると、群像劇タイプの小説のようです。

 カタルーニャ語部門は珍しく2部門ともバレンシア出身者です。小説部門のジョアン・フランセスク・ミラは以前このブログでもカタルーニャ文学栄誉賞(2004)受賞の際に取り上げたことがあります。カタルーニャ文学界では有名な作家ですね。受賞作は三部作の完結編。ファウストを下敷きに、世界を理解するために悪魔に魂を売る学者の話とか。

◆ David Trueba gana el Premio Nacional de la Crítica (El País)

2007年度批評家協会賞(2005,2006年データ含む)
2004年度批評家協会賞
2003年度批評家協会賞

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2009/07/31

アルファグアラ賞2009

 今年のアルファグアラ賞です。ちょっと遅めの3月24日発表。

XII Edición del Premio Alfaguara de Novela
 Andrés Neuman: El viajero del siglo

 アンドレス・ネウマンは1977年ブエノスアイレス生まれ。14歳からグラナダ在住。22歳でデビューし、1999年エラルデ賞次席、2002年プリマベーラ賞次席と続いて、今回は三度目の正直といったところでしょうか。長編だけでなく短編集も3冊あるほか、詩集もいくつか出していて高い評価を得ています。ヴィルヘルム・ミュラーの『冬の旅』の翻訳もしていて、今回の受賞作を書くにあたってインスピレーションを得たそうです。(Neuman ノイマン、という姓からアルゼンチンでもドイツ系の家系なのではないかと勝手に想像しているんですが、裏を取ったわけではありません)
9788420422350

 受賞作は19世紀、ナポレオン後の時代のドイツが舞台。シューベルトのリートを下敷きに……というのは前述の『冬の旅』を指しているのでしょう、旅人が手回しオルガン弾きの老人と出会い、一晩だけ旅籠に泊まるつもりがいろいろあって丸一年になってしまう話だとか。(この老人が『冬の旅』最後に出てくる「辻音楽師」を表しているんでしょうか?)

◆ Andrés Neuman gana el Alfaguara con una novela de un viajero en la Alemania del XIX (El País)

◇ 2008年アルファグアラ賞
◇ 2007年アルファグアラ賞
◇ 2006年アルファグアラ賞
◇ 2005年アルファグアラ賞

◎ アルファグアラ賞受賞作品

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2009/07/29

プリマベーラ賞2009

9788467031003
 集中豪雨など異常気象による被害があった地域の皆様にはお見舞い申し上げます。下書きを保存したまま三週間も経過してしまいました。文学賞データの続きです。


 先の記事でも触れたように、今年のプリマベーラ賞はチリの作家ルイス・セプルベダでした。

Premio Primavera de Novela 2009 (XIII edición)
Luis Sepúlveda: La sombra de lo que fuimos
finalista - José María Beneyto: Los elementos del mundo.

 ルイス・セプルベダは1949年チリのオバーリェ生まれ。学生運動に関わりピノチェトのクーデターで弾圧を受けてヨーロッパへ亡命します。しばらくはドイツで新聞や雑誌に記事を書きながら作家活動をしていましたが、現在はヒホンに在住しています(そういうわけで、セマナ・ネグラにも参加しています)。ヨーロッパ各国語にも訳されていて、知名度はある作家なので、受賞歴がこれまでなかったのが意外な感じ? 邦訳も『パタゴニア・エキスプレス』『ラブ・ストーリーを読む老人』『カモメに飛ぶことを教えた猫』『センチメンタルな殺し屋』と、この世代のラテンアメリカ作家としては出ている方ではないでしょうか。
 受賞作では三人の亡命者が故国チリへ帰る話が、ミステリとユーモアの要素をからめつつ進行します。

 次席のホセ・マリア・ベネイトは本作がデビュー。第二次世界大戦前夜、ナチズムの誕生の時期を扱っているということです。どうもプロフィールを見る限り、マドリッドにある大学 Universidad CEU San Pablo の国際法・国際関係の教授で、ヨーロッパ学研究所の所長らしいです。

◆ Luis Sepúlveda obtiene el XIII Premio Primavera de Novela (ABC)

◇ 2008年プリマベーラ賞 
◇ 2007年プリマベーラ賞(含2006年データ)
◇ 2005年プリマベーラ賞
◇ 2004年プリマベーラ賞

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より以前の記事一覧